今日、外は冷たい雨が振り続けています。
アバッセたかたの会場に、絵を依頼された飼い主さんが、大船渡からいらっしゃいました。
この方は、東日本大震災の時、犬(チワワ)を亡くされた方です。
そっと会場に来られて、しばらく絵を見られた後、私に当時のお話をしてくださいました。
東日本大震災が起き、飼い主さんは何も持たず、愛犬だけを抱き、避難所である大船渡公民館に避難されました。
「犬は中に入れられない。犬は車に置くように」そういわれましたが、飼い主さんは犬と離れる選択はなく、避難所には入らず、犬と一緒に車で暮らしました。
当時、車のドアも凍ってしまうくらいの寒さだったそうです。
犬は寒さと恐怖と環境の変化とで、食べるものも少なくなり、体調を崩していきました。
1ヶ月ほどで、ガソリンもなくなり、車での生活もできなくなりました。
その後少しの間、知人宅で過ごされ、5月に仮設住宅に移られました。
しかし、仮設住宅でも様々な問題があり、犬はストレスにより心臓を悪くして亡くなってしまいました。
避難所に避難する時、みんな大切なものを持って避難すると思います。
この飼い主さんにとって大切なものは、犬だけでした。
この飼い主さんだけではなく、当時、もう一人、室内犬をジャンパーの内側に隠して避難所に逃げて来た方がいたそうです。
しかし、犬を隠していることがわかり、避難所から出されてしまったそうです。
他の避難所の話では、同じようにインコを隠して避難した人がいましたが、ペット不可だからと避難所から出されてしまったそうです。
それぞれ、みんな大切なものは違います。
命がけで抱えて来たその大切なものを、価値観の違いやルール、多数決で、引き裂く権利は一体誰にあるのでしょう。
その場から追い出され、いなくなった人を含む様々な命たちの行方は、もう誰にもわかりません。
その中に、二度と声を上げることができなくなった命がたくさんあるということを、今、生きている私たちは、絶対に忘れてはならないことだと思います。
災害時、どれだけの命を救えるかは、日頃の命に対する価値観が大きく関係するのです。
だから、どうか命について、様々な命について、真剣に考えて欲しいのです。
私はもう二度と「助けられたはずの命」という言葉を聞きたくはありません。
人も動物も鳥も植物も、全て、助けられるのであれば、助けたいです。
排除するのではなく、助け合えばいいじゃないですか。
みんな、生きていて欲しいです。
そう、心から願います。
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